「人生うまくやろう」なんて利口ぶった考えをタローマンは許さない。

僕はね、話がつまらないんです。

『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』は岡本太郎の展覧会のプロモーション用に制作された映像作品であり、岡本太郎の作品や言葉を元にしたドラマが展開される。NHKが制作したものだが YouTube でも無料で見ることができる。

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タローマンは第1話が一番おもしろいんですよね。「でたらめをやってごらん」と言いつつも新規性のある「でたらめ」を生み出すことに苦しむタローマンの姿が描かれ、コミカルな中に芸術家の苦しみを表現する深みがあります。それに比べると2話以降はわりと一方的に言いっぱなしなんですよね。たとえば第2話「自分の歌を歌えばいいんだよ」それはね、わかるんです。自分の歌を歌えばいいんですよね。でも自分の歌なんてないんです。岡本太郎は芸術エリートの家に生まれてフランスで一流の芸術家たちと交流したわけだから、なにか表現したいことがあるのかもしれない。でもですね、僕にはそういう豊かな経験、豊かな感受性、豊かな想像力はないんです。そんなことを言われても「パンがないならケーキを食べればいいんだよ」とあまり変わらないじゃないですか。

第9話で「『人生うまくやろう』なんて利口ぶった考えをタローマンは許さない」と語られます。ここでこのブログの過去の記事の一覧を眺めてみましょう。ほら、人生うまくやろうなんて利口ぶった考えばかりじゃないですか? それは芸術家とは対極にある存在であって、そこからは人の心を動かす言葉なんて出てこないんです。

でもね、それでいいんでしょうね。僕は僕をやっていくしかないわけですから。